マクロスΔとマクロスF、両作品を考察する

シェリルとランカが決めて

ヒロインとして

マクロスFのヒロインとして『シェリル・ノーム』と『ランカ・リー』の二人が挙げられます。一部のファンからは『クラン・クラン』も第三のヒロインとして見るべきだと語っていますが、四角関係で更にここへアルトのライバルたるミシェルが登場したら、初代マクロス並みの修羅場が待ち構えている。それは正直避けたいところ、というよりは界隈で囁かれていることなので実現はしなかっただけでもありがたい話か。今作を語る上で外せないシェリルとランカ、物語を見てもらえば分かるように全く立ち位置が異なっています。

洋楽ディーヴァ風の、現代チックなトップシンガーとして描かれている『シェリル』に対して、清純派で王道のアイドル路線の『ランカ』とでは系統がまるで違ってきている。そのためテレビシリーズでのシェリルが人気凋落するという辺りは、少し行き過ぎているようにも見えた。逆に言えばランカの祭りあげられ方が政府を上げてのものだったので、傍目からしたらまるで偶像崇拝を見ているような気分にも苛まれたものだ。やり過ぎだろうとは思いつつも、それだけ重要なんだろうという点が見られる。

この二人については歌の面でも話題を博している。作品を飛び越えてのキャラ人気もさることながら、発表してきた新作の楽曲を披露しては大ヒットを記録した。元々毛色が異なる歌手として描かれている点からも、良い意味で劇中では差別出来ていると言っていいでしょう。

ヒロインの出自についてはこの際良いとして、やはりテレビ版と劇場版との違いをピックアップして見ることにしよう。

立ち位置として

シェリルの場合

テレビシリーズ

テレビシリーズでのシェリルは言ってしまえば高飛車で小悪魔的な性格の持ち主。ただ歌となれば全身全霊、命をかけてもいいほどに情熱を注いでいる事もあって、その態度は歌手とすれば一貫性の取れたプライドの高いお姫様キャラ的な位置になっている。自身が努力したから売れたこともあって、自分に対して確固たる自信を持っている。そんな自分に対して取り繕うとしないアルトに興味を示し、何かといちゃもんを付けては彼を言いなりにさせていた。

ただ時間が過ぎる中でランカの存在が大きく、自分を脅かすライバルとなっていく様に恐怖を覚える。そして明確にアルトへ寄せていた恋心もあって、自分の余命が長くない事もあって物語後半に差し掛かる中で肉体的・精神的に追いつめられていく。やがて自分のことを知ったアルトと距離を一気に縮めるも、先の短い自分を忘れてもらおうとして意地を張ってしまう。

終盤において、ランカマジックの影響によって病を克服し、ランカからの宣戦布告を受けるとして物語最後まで生き残ります。

劇場版

テレビ版と同じく性格やプライドの高さは変わらないものの、物語初期の頃からアルトにだけは態度を変えているのが見て取れる。彼に対して心を開いて近づきつつも、自身に貸せられた任務のためにフロンティア船団内で暗躍もしていた。

ストーリーが展開する中で、テレビ版と同じくV型感染症に冒され、声帯を切り取る手術を受けなければ助からないほど悪化してしまう。激化する任務の中で、アルトに戦線離脱を求めた矢先にスパイ行動が露見して、フロンティア政府に逮捕され、戦時下とあって死刑宣告を受けてしまった。その後助けに来たアルトに事の真相を告げるが、ランカを助けるために自らを犠牲にするも、ランカがペットとしていたあい君により生還する。

実は幼少期にアルトが子役だった頃の舞台を見てからずっと憧れを抱いており、アルトとは昔に一度であったことがあった。それを思い出したアルトとシェリル、ようやく繋がりかけた二人に待っていたのは悲しい結末だった。

ランカの場合

テレビシリーズ

ごく普通の女子高校生として描かれ、シェリルのライブに訪れた際にバジュラの攻撃を受けたところをアルトに助けられる。それからアルトに自身の夢を語って背中を後押しされたことから、コンテストに応募し、更に街中で歌っていたところをスカウトされてデビューを果たす。下積みを重ねて確実に一歩ずつ成長する先にシェリルを目指すが、憧れの存在でもあるシェリルと確実に距離を縮めるアルトに対して淡い恋心を抱いていく。

やがて出演した映画によってトップアイドルとして活躍し、戦時下において自身の歌がバジュラに影響を及ぼすことから軍事利用されてしまう。またランカも歌うことでバジュラと邂逅する能力もあり、アルト達大切な人を守るための役割に板挟みとなってしまう。やがてバジュラと人間が友好関係になるため離反するも、最終的に全てを救うヒロインとして描かれている。

劇場版

テレビシリーズと違って最初期からアルト達と知り合いとなっている。大量のバジュラが襲いかかってきた中でシェリルと共にフロンティア船団を救ったことから、売れないアイドルから『超時空シンデレラ』とまで呼ばれるトップアイドルになった。シェリルと二分するだけの人気歌手だったが、自身の歌に軍事利用するだけの価値があることは当初知らなかった。やがて彼女を通してバジュラには人間の感情ともいうべき思考ネットワークが存在することも明らかにされ、彼女の存在こそがバジュラと人間との架け橋になっている。

こちらでもアルトに恋しているが、最初から一貫してシェリルだけを恋愛対象として見ていたアルトに、振られるとわかっていながらも思いの丈を告白した。やがて全ての戦いが集結し、バジュラ本星に移民が始まる中で1人、愛しかった人と憧れていた人の二人が共に帰って来る日を願い続けている。

立ち位置がかなり違ってくる

シェリルにしてもランカにしてもテレビシリーズと劇場版では大きく立ち位置が異なっています。とりわけシェリルは幼少期からアルトに恋い焦がれ、ランカは報われない恋でも諦められない切なさが見られる。劇場版だからこそ出来る表現と言えると同時に、マクロスFという作品の可能性が広がった点でもある。

テレビと映画、異なる媒体ながらも同じメディア作品でありながら設定を少し変更しただけで見方も役割も、そして魅力すら異なるものへと変質した。